発酵漬物

乳酸菌を利用した漬物

野菜は雑菌がつきもの

 スーパーやデパートに並べられているきれいな野菜でも調べてみると雑菌がたくさんついています。加熱野菜料理で雑菌は死んでしまいますが、漬物では上手につけないと雑菌が増えて変な味になります。

雑菌の中には必ず大腸菌群がいます。その中に大腸菌O-157がいたら大変ですね。O-157は牛の腸管にいて、そこから汚染することが多いです。リンゴが食中毒源になることがありますが、未熟牛糞堆肥から感染したと考えられます。農水省の調査で生野菜からO-157が検出されていませんが、大腸菌は数%の割合で検出されています。

野菜の内部はとてもきれいです。ダイコンやカブ、ニンジンなど表皮がなくても良い野菜は皮を剥いて使いましょう。

キュウリやナスなど皮を剥けないものは板摺をしましょう。板摺で雑菌が減ります。

白菜など葉物野菜は塩素殺菌が進められています。

乳酸発酵は大腸菌群の死滅に有効です。

発酵キュウリ浅漬の作り方

乳酸菌を使った発酵キュウリ浅漬を作ります。

気温が15℃以下、または低温庫を使います。

材料

 キュウリ 2本       200g

 3%塩水          100ml

 乳酸菌液          2~4ml

作り方

 キュウリは水洗後、両端を切って少量の塩で板ずりします。

 板ずりしたキュウリを軽く水洗いし、卓上漬物器に平らになるように並べます。

 乳酸菌液は3%の塩水に混ぜて、漬物器に注ぎます。

 キュウリの半分ぐらいに塩水がかかかるように荷重をかけます。

 翌日、漬液が少し濁り、キュウリ全体が漬液に浸かっていれば出来上がりです。

食塩分1%以下の美味しい浅漬けです。

 

作り方のポイントは塩水に培養液を入れてpHを4付近にすることです。これで雑菌の増殖は抑制されて異味異臭は全く発生しません。

乳酸菌でザワークラウト作り

気温が15℃以下の季節になりました。ザワークラウトの仕込みに最適な時期です。

繊維質が多い冬キャベツは品質の良いザワークラウトになります。

瓶詰めして殺菌すれば1年間日持ちします。

乳酸菌を使って安定した発酵を行います。 

      食物繊維たっぷりの発酵漬物

 

材料

 冬キャベツ     1個

 塩         キャベツ重量の2%分

 乳酸菌培養液    10~20ml

作り方

①キャベツを千切りして大きな容器に入れ、塩と乳酸菌培養液を振りかけてよく混ぜます。

②しんなりしてきたら卓上漬物器に入れて強く押します。翌日、押し増しをします。

③1週間以上発酵させたら、取り出して軽く水洗い、絞って瓶に詰めます。

ザワークラウトを詰めた瓶の隙間を埋めるように1%の乳酸水溶液を加えます。

⑤蓋を軽く閉めて圧力鍋に入れ、圧力は弱で(およそ110℃)10分間の蒸気加熱をします。これで1年間、日持ちするようになります。

発酵中のザワークラウト

 商品化する場合は、キャベツの種類や産地、貯蔵条件によって発酵後の品質にバラツキが出ますので、滴定酸度を指標に発酵期間を決めて一定の品質の製品を作りましょう。

 

乳酸菌液の作り方

1.圧力鍋で滅菌します。

 培地や竹串、水などを滅菌します。竹串などはアルミフォイルで包んで、120℃、20分間の水蒸気加熱を行います。乳酸菌の培地としてキャベツの煮汁が使えます。分離用培地にする場合は煮汁の1.5%分の粉末寒天を加えておきます。

 

2.乳酸菌分離用のサンプルと希釈法

 酸っぱくなった浅漬け、韓国直輸入のキムチ、糠床などから乳酸菌の分離ができます。このようなサンプルには乳酸菌が1gあたり数億個入っていますので、100万倍か1,000万倍の希釈をします。サンプル1gを測り取り、99gのきれいな水(水道水、ミネラルウオーターまたは滅菌水)を加えて100倍希釈とします。100倍希釈水1gまたは1mlを測り取り99gの水を加えます(1万倍希釈)。1万倍希釈水1gまたは1mlを測り取り99gの水を加えます(100万倍希釈)。さらに10倍希釈すると1,000万倍希釈になります。

 

3.分離用培地と滅菌シャーレでの培養

  分離用培地は寒天を加えたキャベツ煮汁を使います。溶けている培地に少量の粉末炭酸カルシウムを加えて白濁させます。炭酸カルシウムに雑菌が多い場合はオーブンで160℃、30分間の加熱殺菌をします。

 滅菌シャーレに100万希釈液と1,000万倍希釈液の1mlを各々入れます。炭酸カルシウム添加キャベツ煮汁培地が手で持てる程度に冷めたら希釈サンプルを入れたシャーレに加えて、ゆっくりと動かして混ぜて、静置し、固まるのを待ちます。完全に凝固したら25℃前後の保温箱に入れて培養します。培養開始後2~5日以内に炭酸カルシウムを溶かしてクリアーゾーンを伴った乳酸菌のコロニーが見えるようになります。

 

4.乳酸菌の単離と乳酸菌液作り

 滅菌しておいた竹串を使って滅菌キャベツ煮汁に接種します。室温で2,3日培養すれば乳酸菌液の完成です。乳酸菌液1mlには数億個の乳酸菌が入っていて、雑菌は入っていません。使うまで冷蔵保存します。

 

 キムチや糠床などの分離源や同じ浅漬けでも発酵期間によって性質の異なる乳酸菌を取ることができます。

   直輸入キムチの乳酸菌         発酵期間の少ない浅漬けの乳酸菌

 

発酵漬物作りには15℃で早く増える乳酸菌を使います

 

次回はザワークラウトの作り方を紹介します。

 

 

発酵漬物作りには乳酸菌と発酵温度

乳酸菌添加の効果

 キャベツを千切りして、キャベツ重量の2%の食塩と1%の乳酸菌培養液、他方には乳酸菌液の代わりに生理食塩水を加えて15℃で漬けました

 左は乳酸菌を添加したもので、右は乳酸菌無添加のものです。無添加のキャベツは色がくすみ外観が悪くなっています。

 皿上の試験紙は亜硝酸テスターで、亜硝酸が多いと赤色が強くなります。無添加の漬液からは100ppm以上の亜硝酸が検出されました。

 

 漬け込み4日後の乳酸菌の数を調べました。乳酸菌は培地中の炭酸カルシウムを溶かして周りに透明環を作ります。左は乳酸菌添加区のものですべてが乳酸菌です。しかし、右の乳酸菌無添加のものはキャベツ由来の乳酸菌がかなり増えていますが、雑菌が混じっています。

 

 右の乳酸菌無添加のものからは大腸菌群が検出されました。X-GAL培地で大腸菌群は青緑色のコロニーを作ります。左の乳酸菌を添加したキャベツ浅漬の漬液からは青緑色のコロニーを含めて他のコロニーも全く出現しません。乳酸菌無添加のキャベツ浅漬けの色が悪いのはこのような雑菌が漬け込み中に増えてしまったからです。雑菌によっては異味異臭を作り、漬物の品質を落とします。

 

発酵漬物作りには乳酸菌培養液を使います。

 

雑菌に対する発酵温度の影響

      15℃            25℃

 同じ数の大腸菌群やグラム陰性菌を含むサンプルを15℃と25℃で培養しました。

 25℃に置いた場合、増殖が速やかで2日後には多くのコロニーが見えますが、同時期の15℃ではわずかな増殖です。この温度では大腸菌群やグラム陰性菌(腐敗菌)の増殖を完全に止めることはできませんが、増殖速度は明らかに遅くなります。

 腐敗菌や大腸菌群は酸性環境に弱いので、この温度帯で早く増殖する乳酸菌を使えば悪玉菌の増殖を完全に止めることができます。

発酵漬物作りは15℃で仕込みます。

 

乳酸菌を使って15℃前後で発酵させると失敗なく発酵漬物ができます。

次は乳酸菌液の作り方を紹介します。